【争点並びに裁判所による認定と判断】

争点① ツイートにより摘示された事実の内容及び社会的評価の程度の有無
本件ツイートに添付された官報公告記事の画像と一体となって、原告が本名を芦暁楠、通名を「伊藤詩織」とする外国人であり、2010年9月8日に東京地裁で破産手続開始決定を受けたという事実を摘示するものと認められる。

 原告が「伊藤詩織」という実名を明らかにし性被害を訴えて社会に発信している人物であること、「#性行為強要」のハッシュタグは性被害に関する文脈で用いられているものであること、本件ツイートに先立ち、被告が複数回原告を名指ししたうえで別件性被害や別件名誉毀損訴訟に言及することに照らし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件ツイートが「伊藤詩織」という人物の中でも原告を名指しするものであることは明らか。

 ツイートは、破産開始決定を受けたという事実を摘示するもので、原告が多額の負債を抱え、経済的に破綻して破産開始手続決定を受けるに至ったかのような印象を与えるから、原告の社会的評価を低下させると認められる。

 摘示事実は、真実に反しており、かつ被告から摘示事実が真実であると信じる相当の理由がある旨の主張・立証はない。よって原告に対する違法な名誉毀損行為に当たる、とした。

 

争点② 損害の発生及びその額
(裁判所の評価)

 ・原告の経済的信用を棄損し、その社会的評価を低下させるものであるところ、その態様は通名を「偽名」と誇張して記載したうえ、その裏付けであるかのように官報公告記事の 画像を転載するなど、読者の誤認を殊更誘引する演出を加えたもので悪質である。

 ・原告を名指しで中傷する態様でなければ名誉毀損とならないという趣旨の先行ツイート を踏まえると、本件ツイートではあえて原告とは別人である者を対象とする表現行為の体 裁を用いて、先の持論のもと名誉毀損とはならないとする方法を実践したことがうかがわ れ、そうであるとすれば身勝手な動機に基づくものと言わざるを得ない。

 ・被告の一連の先行ツイートから、被告は原告の別件名誉毀損訴訟に反感を抱いているこ とを繰り返し表明したうえで、本件ツイートに及んだもので、原告に対する攻撃の一環で あると認められる。

 ・被告のアカウントは2020年7月2日時点で1万8000人のフォロワーを擁していたもの  で、ツイートの社会的影響は小さくない。

 ・被告は本件提訴報道後、「伊藤詩織とかいう活動家が突然俺を訴えると言い出した。正 直全く意味が分からない。」「俺は断固抗戦する。」「【悲報】伊藤詩織、裁判前に一方 的な記者会見を開き世論を味方に付けようとするも、反応が真逆で大失敗してしまう。」 などと投稿し、原告に対する攻撃的な姿勢を軟化させていないこと。

以上の事情を認め、本件ツイートが1回の投稿にとどまることを考慮しても、原告に与 えた精神的苦痛は軽視できないもので、原告に対する慰謝料の額は30万円が相当である と認め、弁護士費用は3万円が相当であるとした。

 

③ツイート削除請求の可否

  原告の名誉権を侵害し続けているものと言わざるを得ないから、被告にその削除を命ず るのが相当と判断した。